血管アクセスセンター
当科の特色と内容
外来での診療の対象とする主な疾患とその症状
血液透析を行ううえで血管アクセスの確保は大きな問題です。 高齢者や糖尿病患者の増加につれて、血管の性状や動脈硬化の進行、心機能の問題のために、必ずしも自己血管内シャントを作成できる患者さまばかりとは限りません。
また、血管アクセスを確保できたとしても、その後閉塞や血流低下により透析困難となる症例も見られます。 長期透析になると、シャント部に瘤ができたり、シャントがあるために心機能に影響が出たりする場合もあります。
当院ではこのような透析患者さまの状況を踏まえ、2003年より血管アクセスセンターを開設し、血液透析導入にあたっての血管アクセスの作成はもちろん、 血管エコーやシャント造影といった検査、カテーテルにより行う血管拡張術・血栓除去術などを駆使した血管アクセスの管理に取り組んでおります。
主な疾患における診断と治療
白鷺血管アクセスセンターでは血管エコー検査の導入により、患者さまに最適な血管アクセスを作成できるようにしております。 前腕の自己血管内シャントを第一選択肢として、自己血管内シャント作成困難な症例に対しては上腕動脈表在化、グラフト(人工血管)内シャント造設を行います。
また、血管アクセスの血流低下や閉塞が見られる場合には、血管エコーやシャント造影を行います。そのうえで血流低下や閉塞の原因に応じて、血管拡張やステント留置、血栓除去、シャント再建術、グラフト部分置換術・延長術などの治療を行います。 まれに、自己血管・グラフトのいずれの方法でも血管アクセス作成が困難な症例もあります。このような症例では、長期留置カテーテルの埋込にて対処しています。 これらの治療はほとんどの場合、通院で対応しております。人工血管移植術などの場合には入院して頂くこともあります。
検査について
【血管超音波検査】
血管の状態やシャントの状況を見るための検査です。わずかな時間に非侵襲的な方法で行うため、患者さまにはご負担をかけません。人工血管移植術を実施された患者さまには、超音波によるシャントの定期検査(予約制)を受けて頂き、日頃の管理に役立てて頂けるようにしています。
血管超音波で検査する内容
- 血流量の測定をします
血流量を測定することによって、透析が十分に行えるかがわかります。
人工血管では定期的に血流量を測定し、「人工血管内シャント管理手帳」に結果を記入しています。 - 狭窄、閉塞がないか調べます
狭窄があると血流量が低くなります。内シャント全体が閉塞すると透析ができなくなります。狭窄や閉塞部位に印を入れる事で、PTAや手術の一助になっています。 - 血管の走行や深さを調べます
走行を調べることで穿刺可能な場所がわかります。血管の分岐点に穿刺すると血管壁に針先があたり、透析が十分にできない事があります。走行が深いと穿刺自体が困難になる事があります。また、走行を把握する事でPTAの参考になります。 - シャント静脈瘤が無いか調べます
瘤の大きさを測定し、大きさの変化や壁の厚さなどを見ています。 - 石灰化、弁がないか調べます
石灰化があると血管が硬くなります。石灰化が強いとエコーで描出できなくなる事があります。穿刺部に弁があると針先があたる事があり、透析が十分にできない事があります。また、弁の可動性が悪くなると狭窄を引き起こす事があります。
上記以外にもスティール症候群や感染が疑われる場合など目的に合わせて調べています。通常は、血管エコー後に診察を受けてもらっていますが、人工血管の素材や深さ、石灰化等によって描出できない場合もあるので、追加検査が必要な事もあります。
【シャント造影】
血管エコーにより異常が認められた場合には、シャント造影を行います。
上腕よりカテーテルを挿入し、造影剤を流してシャントの血流、狭窄の有無を調べます。必要なときはカテーテルによる治療も行います。