薬剤科

はじめに

薬剤科について

薬剤師といえば、「薬を作る人」や「薬の説明をする人」というイメージが強いかもしれません。

もちろん、それらは、薬剤師の重要な基本的業務ですが、われわれ薬剤師は、他にも様々な業務を行っています。 特に、透析療法を中心とした腎尿路系の専門病院である白鷺病院では、「有効かつ安全な薬物療法を提供する」という理念を基に、特徴的な業務も行っています。

薬剤科について

  • 薬剤科の基本理念
    有効かつ安全な薬物療法を提供する

  • 薬剤科の基本方針
    慢性腎臓病(CKD)患者さまの薬物療法の適正化に努める。
    理念の実現に向けて、薬の専門家であるべく、日々研鑽する。

薬剤科の業務

  1. 調剤業務
  2. 病棟における薬剤管理指導・病棟薬剤業務
  3. 腎疾患外来における薬剤管理指導(おくすり相談室)
  4. 医薬品情報管理(DI 業務)
  5. 治療薬物モニタリング(TDM)
  6. 副作用情報の管理
  7. 高カロリー輸液の無菌調整
  8. 薬学部学生の実務実習指導
  9. 透析患者に対する投薬ガイドラインの作成・整備

1、「透析患者に対する投薬ガイドライン」の作成

一般的な薬の添付文書には載っていない慢性腎臓病患者(透析患者含む)さんに対する薬の投与方法データベース「透析患者に対する投薬 ガイドライン」を作っています。

 

通常、薬は尿や便などと一緒に体外に排泄されます。ところが、腎機能が低下した患者さんは尿が出にくいため、尿から排泄される割合の高い薬をのむと、通常より長く体内に留まってしまい、 副作用が出やすくなります。そのため、そういった薬については、患者さんの腎機能にあわせた適切な用量調節が必要となります。 
しかしながら、一般的に使われている「医療用医薬品の添付文書(製薬会社作成)」を見ても、腎機能低下患者さんへの適切な用量調節の方法は、 載っていないことが多いのが現状です。

そこで、当院薬剤科では、多くの海外文献および国内文献の調査や、自施設の研究結果などを基に、 「透析患者に対する投薬ガイドライン」を独自に作成し、腎機能が低下した患者さんへの薬の投与方法の適正化に努めています。
なお、この投薬ガイドラインは、他施設からの閲覧要望が非常に多かったため、すべての透析患者さんへ、より適正な薬物療法が提供されることを願い、 1997年から他施設の医療関係者にも公開しています(2008/10/26現在の登録者は2,500名以上)。
医療関係者の方はこちらへどうぞ。

※注意:このガイドラインは専門家向けであり、患者さんは見ることができません。これは、患者さんが記載内容について誤った解釈をすることによる事故を防止するための処置です、ご了承下さい。

 

2、治療的薬物濃度モニタリング(TDM)

血液中の薬の濃度を測定・評価することにより、有効かつ安全な薬の投与量や投与方法を検討し、その患者さんにあった薬物療法を提供しています。

治療的薬物濃度モニタリング(TDM)について

お酒をのんだ時の酔い方に個人差があるように、薬の効果にも個人差が現れます。 一方、薬には、有効な投与量(血中濃度)と、副作用が出やすい投与量(血中濃度)の差(幅)が大きい薬と、差(幅)が小さい薬があります。
その差(幅)が小さい薬については、血液中の薬の濃度を測ることにより、その薬がその患者さんにとって、有効な濃度か?副作用が出にくい濃度か? などを評価し、より有効で安全な薬の投与方法を考え、治療することを「治療薬物濃度モニタリング(TDM)」と言います。

このTDMに必要な知識である薬物動態学を詳しく学んできた薬剤師が、その知識を活かし、薬の用法・用量などの適正化を図っているわけです。 
入院患者さんのみならず、外来の透析患者さんや、一般外来の患者さんについても、病院薬剤師がTDM(評価・投与設計)を行い、医師・看護師との連携をとり、 適正な薬物療法が提供できるように努めています(約80件/月)。

 

 

3、副作用モニタリング

薬の副作用を監視し、一元管理することにより、情報を共有し、副作用の予防・再発防止や、早期発見・早期対応に努めています。

副作用モニタリングについて

薬は、上手く使えば、有効で安全なものですが、一方、使用方法を誤ると、副作用が出てしまう(薬が効きすぎて出る副作用)ことがあります。こういった副作用を防ぐために、1)で示した投薬ガイドラインの利用や、2)のTDMなどを行っています。
一方、予測できないアレルギー性の副作用が起こることもあり、その重篤化を防ぐには、早期発見・早期対応が重要となります。たいていの副作用は早く発見することで、重篤な状態になることを防げるわけです。
また、アレルギーのある薬を再び使ってしまうと、更に重篤な副作用が出やすいことが知られているため、当院では電子カルテに個々の患者さんの副作用記録を残し、再発・再投与防止に努めています。
なお、仁真会では、発生した薬の副作用をすべて薬剤科が一元管理することにより、医師・薬剤師・看護師などで、その情報を共有し、頻度の多い副作用の対策なども考えていきます。