臨床工学科取組み2

4、適正透析への取り組み

適正透析って??

透析治療は働きが弱くなってきた腎臓働きの一部の代わりをしている治療で、その腎臓の働きの中でも、老廃物や過剰な水分を取り除き電解質を調整する働きを腎臓に代わって行う治療です。

腎臓と透析治療を比べると、腎臓は毎日働いていますが血液透析では週3回の透析治療中と限られた時間だけになります。そのため、1回の透析治療が十分出来ていること、つまり 適正透析であることがとても大切です。適正透析を確保すれば合併症の発生予防や生命予後を改善することが出来ると考えられています。

適正透析への取り組みとして年に4回、KT/V(標準化透析量)を始めとした検査を行なっています。 検査の結果から、ダイアライザーの種類や大きさ、透析時間、血流量など透析条件が適正かどうか?十分な透析が行なえているかどうか?を検討します。

透析量に過不足があれば透析条件の変更を行い、再度適正透析の評価を行います。また多種類のダイアライザーを揃えておりますので、それぞれの患者さんに合った透析法で治療することができます。

適正透析での評価項目

【KT/V】

どれ位透析できているかを表す指標となる数値が、KT/V(標準化透析量)と呼ばれるものです。

KT/VのKはダイアライザーの尿素クリアランスをあらわし、Tは透析時間を表します。Vは尿素の分布スペース、つまり患者さんの総体液量に当たります。

患者さんの総体液量は体重によって決まるので、透析の効率を上げるにはダイアライザーの性能を良くし、透析時間を長くすれば良いことになります。日本透析医学の統計調査結果から、この数値KT/Vが1.2~1.6の間で最も生命予後が良いとされています。仁真会でも、1.6以上を目標に透析条件の提示をしています。

【nPCR(標準化蛋白異化率)】

nPCRは標準化蛋白摂取量を反映しており、栄養状態の指標と言えます。日本透析医学会統計調査結果では、0.9g/kg/day以上であることが望ましいと報告されており、仁真会では、1.0~1.2g/kg/dayを目標にしています。

【%CGR】

%CGRは%クレアチニン産生速度で、同世代同性の透析患者さんと健康な人との筋肉量を比較し、透析患者さんの筋肉量が健康な人の筋肉量に比べ何%筋肉をもっているかを表します。%CGRの値が多いほど筋肉量があり、100%以上あれば同世代同性の平均以上の筋肉量を持っていることになります。

日本透析医学会統計調査委員会報告では、%CGR90~100%を対象として、より値が大きいほど死亡リスクは低いと報告されています。

そのため仁真会では、%CGR 90%以上を目標にしています。

【GNRI】

栄養状態を評価する指標です。身長と基礎体重(ドライウエイト)、血清アルブミン値から算出します。GNRIは、透析患者さんの栄養状態の評価指標として、簡便で正確性が高いことがわかっています。仁真会では、92以上を目標にしています。

【β2-ミクログロブリン(β2-MG)】

β2-ミクログロブリンは長期透析患者に見られる合併症の1つである透析アミロイドーシスの原因物質です。仁真会では透析前の目標値を30 mg/L以下にしています。

【その他 】

上記の評価項目の他にも、臨床症状や合併症の有無、クリアスペース率、除去率などの項目も考慮して適正透析を目指し透析条件を設定します。

透析条件

適正透析を目指し最も適した透析を提供できるよう様々な条件に対応しています。

【透析法】

血液透析(HD)、血液濾過(HF)、血液濾過透析(オンラインHDF、オフラインHDF、I-HDF)、長時間透析、アセテートフリーバイオフィルトレーション(AFBF)など患者様の状態に合わせて透析法を選択しています。

【ダイアライザー・ヘモダイアフィルター(透析膜)】

β2-ミクログロブリンが透析アミロイドーシスの原因物質であると考えられてから、β2-ミクログロブリンを初めとした低分子量蛋白領域までの物質除去性能と生体適合性に優れたハイパフォーマンス膜を使用した透析治療が広く普及しました。

現在のダイアライザーは、β2-ミクログロブリンの除去性能とアルブミンの漏出量によりⅠ-a、Ⅰ-b、Ⅱ-a、Ⅱ-b、の4種の他、特別な機能をもつものとしてS型を合わせた計5種に機能分類されています。

血液濾過透析(オンラインHDF、オフラインHDF、I-HDF)では、ダイアライザーに代わり専用のヘモダイアフィルターを用います。

血液透析(HD)と違い、血液濾過透析では補充液として血液に入れた水分を治療中に除去する治療法です。そのため、ヘモダイアフィルターは血液濾過透析での使用に適した性能・構造を持ち合わせています。

仁真会では、ダイアライザー・ヘモダイアフィルターとも様々な患者様の状態に対応できるように除去性能、膜素材、膜面積の違う多種類のダイアライザーを取りそろえ、患者様の状態に合わせ最適なダイアライザーを選択し使用しています。

【血液流量】

血液流量は透析効率と密接な関係があり、血液流量を上げれば、透析効率の向上が見込めます。血液流量は、患者様の慢性血液透析用バスキュラーアクセスの状態を考慮した上で流量を設定しています。

【透析時間】

仁真会では透析をしながら長く元気でいられるよう4時間以上の透析を推奨し、長時間透析にも対応しています。

長時間透析を行うことで様々な効果が報告されています。

例えば、

  • 透析量が確保できる
  • 食事や水分制限の緩和
  • 透析中の血圧の安定
  • 様々な合併症の発症を予防
  • 腎性貧血の改善

などが挙げられます。

また、透析時間について日本透析医学会統計調査よると透析時間と生命予後に明確な関係があると報告されています。透析時間が少なくとも5時間に達するまでは死亡のリスクの低下が認められています。

つまり、より元気に長生きするためには4時間以上の透析を行うことが望ましいということになります。

 

5、スタッフ教育

臨床工学科独自の教育カリキュラムを用い教育に取り組んでいます。

現場教育【OJD;on the job development】

指導者として現場臨床工学技士をはじめ看護師と協力して、業務遂行を通して医療チームの一員として臨床工学技士が成長するために、必要な知識や技術、取り組む姿勢などを習得します。

仁真会での業務に適した独自の臨床工学科業務マニュアルや新人指導チェックシートを用いて、系統的に育成・指導しています。

集合研修・講義【OFF-JT;off the job training】

血液浄化領域に必要な知識の中で『透析液水質の安全管理』、『透析量の管理・評価』、『透析用監視装置の安全管理』、『透析関連機器の安全管理』からなる4つの臨床工学科専任業務について、より深い専門知識と運動的技能を習得、技術レベルの均一化を目標に、定期的に研修・講義を行なっています。

各講義は専任担当者が行い4単位程度の時間を設け、水質検査でのサンプリング方法や細菌培養法、患者監視装置の点検・メンテナンス、透析液供給装置のトラブルシミレーションなどは必要に応じて実技も交えて行ないます。


臨床工学科教育プログラム

入職1年次から3年次まで年数別の段階的なキャリアプランを設定し、段階的に能力の向上を図り、自立的かつ創造的に問題解決を行なえる臨床工学技士育成を目標に教育しています。カリキュラム終了後は目標管理を実施し自己啓発の強化に努めています。

その他、看護部と合同での勉強会や外部の先生方をお招きしての定例勉強会や臨床工学技士定例勉強会を行なっています。また医学データの統計処理ができるよう毎月統計学勉強会を開催しています。