医療福祉相談室の業務

ここでは、ソーシャルワーカーについてのよくある質問に対する答えを紹介しています。

Q1: ソーシャルワーカーとは?
Q2: ソーシャルワーカーとは何の専門家ですか?
Q3: 具体的にどのような時に利用すれば良いのですか?
Q4: どういった人がソーシャルワーカーになるのですか?
Q5: ソーシャルワーカーには資格があるのですか?
Q6: ソーシャルワーカーになるためにはどんな勉強をすればいいのですか?
Q7: ソーシャルワーカーとケースワーカーはどう違うのですか?
Q8: ソーシャルワーカーは世界中にいるのですか?

 

Q1 ソーシャルワーカーとは?
A1

ソーシャルワーカーほど言葉と内容とが結びつかない職業も珍しいのではないでしょうか。
私たちは専門職としての誇りと責任を持って、毎日の業務を行っていますが、その内容を見ると、何だか雑用を引き受けているかのように見えるのかもしれません。それもそのはず、私たちの仕事は人間の生活を対象にしたものだからです。自分の生活を振り返ってみてください、この社会の中で生活するためには、本当にたくさんのことを片付けなければなりません。生活の基本として「衣食住」がありますが、着るものも日々の洗濯や季節ごとの衣替えが必要ですし、傷んだものは繕ったり買い替えることになります。食べることも、家で食べれば買い物に調理、後片付けをしなければなりません。外食にしても、毎回何を食べるか考えるのは頭の痛いところですよね。住まいのことも、水道や電気代の支払いや掃除など、維持するためにはしなければいけないことがあるでしょう。とにかく、生活するためには、なんやかんやと片づけなければならないことがたくさんあるわけです。そのすべてが何とかできていれば良いのですが、病気になって動き回る元気がないとか、障害があるために不便があるとか、高齢になって昔のようにできないとなると、生活がうまく切り盛りできないことも起こります。
そんな時に利用するのが福祉サービスであり、そのための相談窓口となるのが私たちソーシャルワーカーなのです。生活の中で困ったことがあれば、相談の中で「困ったこと」を詳しくおうかがいして、どうすればうまくいくかを考えながら、一緒に解決に向かって進んでいくわけです。

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Q2 ソーシャルワーカーとは何の専門家ですか?
A2

専門家というと,「その職種でないとできない仕事」をしているというイメージがあります。医師や弁護士,教師なんかが代表的なものです。いわゆる「免許職」という職種です。ところが,ソーシャルワーカーの場合,「ソーシャルワーカーでなきゃできない」という内容の仕事が見つけにくいという特徴があります。例えば,私達の仕事を表すのに「相談」という言葉がありますが,私達のところに持ち込まれる相談内容は,役所の窓口や同じ悩みを持つ人やご近所の「ちょっとした物知りの方」に聞いても解決できる場合があります。いろいろな福祉サービスの紹介にしても,福祉サービスのことを知っていれば,誰でもアドバイスできることです。  じゃ,誰でもできる仕事をしているという,私達ソーシャルワーカーはいったい何の専門家なんでしょうか?  
「福祉」という漢字の語源は幸福と同じだとも言われています。つまり,社会福祉は人の幸福を実現するためのもので,人の幸福とは何かをいつも考えています。そういう哲学的な面だけでなく,どうすれば実際に幸福になれるか,その道筋も考えています。もちろん,専門的には幸福ではなく,生活の質(Quality Of Life;QOL)とか福利(well-being)という言葉を使い,「幸福になる」ことを「QOLが向上する」とか「QOLを改善する」という表現を使っています。福利(well-being)というのはまさに「幸福な状態」にあることを指します。このようなことを考え,また仲間で議論を重ねながら,ソーシャルワーカーの先人は,多くの大切な事柄を導きだしたのです。  
例えば,「個別化(individualization)」といって,人間は一人一人違っているものだから,その違いを認め,尊重することが大切だという原則があります。個性を大切にするというのは,最近教育現場でも言われだしたことですが,ソーシャルワーカーは何十年も前からその重要性に気づいていました。また,自分のことは自分で決めるという「自己決定(self-decision)」という原則もあります。これも,医療の中で,最近「インフォームド・コンセント(よく知らされたうえでの同意)」ということが議論されていますが,私達が言う自己決定の原則と中身は同じです。ソーシャルワークでは約50年も前の教科書ですでに詳しく取り上げられています。分野は違っても人間にとって大切なことは共通しているのかもしれません。そういう大切なことに早くから気づいていたのは,ソーシャルワーカーが人間の幸福を実現する手段を,他職種よりもチョピリ真剣に考えていたからだと思います。  
その意味では,「人間の幸福を考える専門家」とでも呼べるかもしれませんね。  では,どうしたら皆さんが幸せになれるのでしょうか?その答えは一人一人違いますし,専門家が押し付けるようなものでもありません。私達ソーシャルワーカーにできるのは,そのお手伝いをすることと道中のお供をすることだけです。  
最後に,ここで説明したような事柄は,私達が仕事をするうえでの約束事は「倫理綱領」という形でまとめられています。興味のある方は,一度ご覧ください。

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Q3 具体的にどのような時に利用すれば良いのですか?
A3

ここでは、医療機関の場合に限り御案内します。
医療機関は病気になった時に行くところですが、病気の時は病気以外にも気になることが出てくることがあります。次のようなことに思い当たれば、皆さんの医療機関のソーシャルワーカーを訪ねてみてください。

  • 医療費はどれくらいかかるだろうか。
  • 医療費の負担を軽くできないだろうか。
  • 治療も必要だが、収入に不安があって生活に困っている。
  • 入院を勧められたが子どもやお年寄りの世話があるので入院できない。
  • 後遺症や障害があるので、退院すれば自宅で生活できるか心配だ。
  • 高齢者や身体障害者を対象にした福祉制度を利用できるか知りたい。

もちろん、このほかにもいろいろな相談があります。とにかく、困った時に相談を持ち掛けてもらえれば、何かのお役に立てると思います。
しかし、皆さんの期待通りに、すべて円満解決というわけにはいかないこともあります。当然私たちにできないことを期待されても対応できかねます。適切なサービスが整備されていなかったり、利用条件に合わなかったりするために、皆さんのご希望をかなえる条件を整えることができない場合もあります。また、私たちは皆さんの代理人ではありませんし、できるだけ皆さん自身が解決していかれることが必要との理想から、何でもかんでも皆さんの代わりを引き受けることはありません。  
現在、私たち医療ソーシャルワーカーは資格制度含めて発展途上の仕事なので、医師や看護婦のように医療機関に必ずいなければいけないという規則もありません。したがって、どの医療機関に行っても、必ずソーシャルワーカーに相談できるとは限りません。残念なことかもしれませんが、もし、皆さんがどの医療機関に行こうかお悩みでしたら、 ソーシャルワーカーがいるかどうかも病院選びのポイントとしてお考えください。ソーシャルワーカーがいて良かったという出会いがあるかもしれません。
このほかにも、老人保健施設や在宅介護支援センター、福祉事務所、児童相談所、高齢者や障害児者,児童を対象にした施設などでソーシャルワーカーは働いています。いつも必ず皆さんのご期待に沿えるわけではありませんが,ソーシャルワーカーをどうか上手にご利用ください。

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Q4 どういった人がソーシャルワーカーになるのですか?
A4

ソーシャルワーカーになるための勉強は、主に4年制大学の社会福祉関係の学部・学科において行います。保健医療機関の場合、多くのソーシャルワーカーは大学で社会福祉を勉強した人が、就職しています。社会福祉の勉強は、内容としては、「社会福祉とは何か?」といった理論的なものから、具体的なソーシャルワーカーとしての技術の習得まで、また分野としても児童から障害者・高齢者と、非常に広い範囲を扱います。中でも、実習は学生にとって大切な勉強の場となります。実習は、単に教科書の知識を詰め込むだけでなく、具体的にソーシャルワークを理解するために大切なものです。例えて言えば、車を運転するためには、本を読んで運転の方法や車の構造,それに交通法規を理解するだけでなく、実際に車を動かしてみることが大切なのと同じです。近年、この実習をカリキュラムに取り入れた大学がほとんどで、良い実習体験をした学生さんは一回り大きく成長されているようです。
しかし、先程も述べたように、医療ソーシャルワーカーは発展途上の仕事であるため、「ソーシャルワーカー」と名乗っていても,一生懸命勉強しているホンマもののソーシャルワーカーと、専門的な勉強もしていないニセものソーシャルワーカーがいます。このように,誰でもソーシャルワーカーと名乗って仕事ができるという困った現実があるのです。残念ながら国家資格がない以上、この状態を取り締まる手段はありません。気になる方は、思い切って相手のソーシャルワーカーの方に、どの学校でどんな勉強をしたのか、尋ねてみてください。もし、相手の方がホンマもののソーシャルワーカーなら、あなたの質問の意図をよく理解してくれるはずです。
では、身近な相談機関である福祉事務所や児童相談所はどうかと言いますと、これまた「福祉」とはまったく縁もゆかりもなかった方々がたくさん配属されているのが実情です。つまり、福祉事務所に相談に行っても、相手はその道の素人が待っていることが多いというわけです。もちろん、素人でも本当に親切に対応してくださる方もおられますが、残念ながら「来るんじゃなかった」と後悔させてくれる方も少なくありません。

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Q5 ソーシャルワーカーには資格があるのですか?
A5

ソーシャルワーカーには現在のところ、「社会福祉士」という国家資格があります。現在、各地の大学で社会福祉士課程を修了し、国家試験に合格すれば社会福祉士の名称を名乗り、相談援助の仕事ができます。大学のほか、専門学校や短期大学で一定の社会福祉関係の科目を取り、ソーシャルワーカーとして一定の経験年数に達した場合にも、受験資格を取得できます。1998年6月には病院・診療所・老人保健施設で働くソーシャルワーカーにも、社会福祉士を取得できる道が開かれました。つまり、4年以上の経験がある医療ソーシャルワーカーであれば、最低1年間短期養成施設という学校を修了することで受験資格が取れることが、当時の厚生省から通知されました。
1998年4月には、精神科領域で働くソーシャルワーカーなどを対象にした、「精神保健福祉士」という資格制度の法律が施行されました。1999年の春には精神保健福祉士が誕生しています。それにあわせて,精神保健福祉士の養成課程を整備した学校も出てきました。ちなみに,2000年4月に施行された介護保険では,介護支援専門員という職種が誕生しましたが,多くのソーシャルワーカーが介護支援専門員として活躍しています。 
現在のところこの2つの国家資格があります。社会福祉士の場合,医師や看護師のように資格がないとその仕事ができないという業務独占の資格ではないので、資格を持たないソーシャルワーカーも働いています。したがって、保健医療機関では、同じ「ソーシャルワーカー」という名称を使いながらも、社会福祉士や精神保健福祉士という国家資格を持った人たちや社会福祉を専攻してきた人もいれば、たまたまソーシャルワーカーとして配属されたり、都合によりソーシャルワーカーと名乗っているだけの人もいます。早い話が、誰でもソーシャルワーカーになっています。
もっとも本当のソーシャルワーカーならば、資格の有無にかかわらず、いつも自らの技量の向上を目指し、新しい情報を仕入れ、より良い仕事をしようとしているものです。

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Q6 ソーシャルワーカーになるためにはどんな勉強をすればいいのですか?
A6

今では社会福祉士・精神保健福祉士の養成課程において、ソーシャルワークに関する基礎的な内容は一通り勉強できます。ただ、それだけではもちろん不十分で、特に人や社会を理解するための知識、効果的に援助するための技術や方法はその人の興味や関心、また就職先に応じて自習することが必要でしょう。例えば、児童虐待や不登校など子どもの問題に関心のある人は、子どもの発達・親子関係・親の育児ストレスなどについて知っておくことで、子どもの抱えている問題や親子が置かれている状況をよりよく理解できるでしょう。児童虐待が疑われる親子に対する介入方法など問題や状況に応じた技術と方法を習得しておくことも求められるでしょう。あるいは、高齢者のための援助を考えるならば、高齢者の身体的・心理社会的特性についての理解は欠かせませんし、また介護保険といったよく利用する制度も詳しく知っておく必要もあります。
こうした勉強は心理学や社会学、さらには精神医学も含めた医学といった学問だけでなく、生活に必要な手続きとか敬語や人付き合いなど一般社会のルールや常識にまで及びます。その意味では、役に立たない勉強などないと言っても言い過ぎではないでしょう。

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Q7 ソーシャルワーカーとケースワーカーはどう違うのですか?
A7

結論から言うと,同じ職種を指しています。
では,なぜこのような言葉の違いが残っているのでしょうか?おそらく,福祉事務所や児童相談所といった公的機関で働く人達が,いまだに「ケースワーカー」という呼び方をしているためだと思います。その結果,ケースワーカーのほうが広く知られているため,いまさら呼び方を変えることが難しいのです。
しかし,今流行の「グローバル・スタンダード」,つまり世界の大きな流れでは「ソーシャルワーカー」という統一した名称を使うことが標準です。かつては,職場や仕事の内容の違いを反映して,ケースワーカー,グループワーカーといったいくつかの呼び方が使われていました。ただ,呼び方や仕事の内容が違っても,仕事をするうえで守るべきこと(専門職の価値と倫理)には共通点があるのです。そこで,ひとつの名称に統一されていきました。したがって,このような背景を知っている人達は,ソーシャルワーカーという呼び方を使うように心がけています。
このように,日本で呼び方が統一されていないことも,私達の仕事を分かりにくくしている原因かもしれませんね。

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Q8 ソーシャルワーカーは世界中にいるのですか?
A8

ソーシャルワーカーは福祉先進国の北欧だけでなく、アメリカはじめアフリカ・アジア・ヨーロッパ・オセアニアの世界各国で活躍しています。もちろん、仕事の細かい内容は各国の事情を反映したものですが、ソーシャルワーカーの目指すところは世界共通のものです。
2年に一度、世界中のソーシャルワーカーが集まる国際ソーシャルワーカー連盟(International Federation of Social Workers;IFSW)の国際会議が開かれています。そこに参加するとその一端を知ることができます。
 それぞれの国でどのような活躍をしているのか興味がある方は一度、世界の様子も訪ねてみてください。

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