リハビリテーション科

はじめに

リハビリテーション科では、仁真会における透析患者をはじめとする腎機能障害患者に対して、理学療法士、健康運動指導士など他職種が連携して、身体の障害に対する機能回復訓練と体の健全な部分の能力の維持向上を図り、質の高い、より良い生活がおくれるよう様々な業務を行っています。

  • 入院患者の機能回復訓練:理学療法士による整形外科的疾患のリハビリテーションおよび歩行、階段昇降、日常生活動作の改善など生活自立に向けた機能回復訓練をベッドサイドおよび機能回復訓練室において行っています。

     

  • 院内デイケア:集団運動プログラム「おたっしゃ運動」:入院患者を対象に座位でも行える運動プログラム(レクリエーション、脳トレ、みんなの体操、ボール運動、ストレッチなど)単調な入院生活に変化をもたらし、患者の心身の機能回復を促進しています。

     

  • 透析運動療法
  • 腎疾患専門外来におけるCKD患者への運動指導
    糖尿病性腎症患者に対して、重症化を予防するための運動指導を行っています。

 

透析運動療法について

  1. 運動の重要性
    世界で10人中1人が、運動不足が原因で発症する疾患のために死亡しているという調査結果があります。運動不足は喫煙や肥満に匹敵する健康への危険要因なのです。日本でも同様に、運動をよく行っている人は、総死亡率だけでなく、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率やそれによる死亡率が低いことが示されており、運動の習慣は、身体活動、メンタルヘルス、生活の質の改善効果をもたらすといわれています。
    運動による身体能力の維持・向上は、生活習慣病の予防だけでなく、寝たきりを減らし、長生きすることと関係しているのです。
  2. 透析患者さんでも同じ
    透析患者さんにおいても定期的な運動習慣のある人は、運動を全くしない患者さんと比較して長生きするといわれています。一方で、わが国では運動する回数が週1回に満たない透析患者さんは約40%にものぼり、運動プログラムを提供している日本の透析施設は10%未満にすぎません。
    現在、適切な透析療法(至適透析)については各種の治療・管理のガイドラインが整備されてきておりますが、近年ではそれに加えて、低栄養の補正(食事療法)や、体力低下(筋肉の喪失:サルコペニア)の阻止のための運動の重要性も認識されてきています。実は運動療法に関する研究は、およそ30年前から世界中で行われてきました。その結果、多種の介入(運動の方法)、好気性トレーニング(有酸素運動)、抵抗運動(負荷のかけ方)、そしてそれらの組み合わせのプログラムが有益であると報告されてきています。透析患者さんであっても、栄養を適切に補給した上で、適切にプログラムされた運動療法の実施により、身体機能を改善させ、長寿を得ることは可能と考えられてきているのです。
    よって私たちは、運動を治療の中に取り入れるべきだと認識しており、当法人では2012年3月から透析中の運動療法に取り組み、2018年10月現在、23名の方が行っています。
  3. 運動療法の効果や透析中におこなうとなぜよいのか?
    透析患者さんの運動不足は様々な問題を引き起こしています。たとえば、倦怠感、低栄養、動脈硬化、骨粗しょう症、循環機能障害などの合併症の進展、筋力低下、体力低下などがあります。運動療法は、これらの問題に対して、良好な効果をもたらすことが期待されています。
    具体的には、最大酸素摂取量の増加、筋力増強、日常生活活動(ADL)の改善、心臓機能の改善(左室収縮機能の亢進)、貧血の改善、不安・うつ・生活の質(QOL)の改善、透析効率(Kt/V)の増加、動脈硬化の改善(脈波伝達速度の改善)などがすでに報告されており、単に筋力が強くなるだけではないことが知られてきています。
    また、透析中の運動療法は当初は安全性について心配されていました。しかし、医療従事者が適切に指導し見守りながら、血圧や脈拍・自覚症状の変化を詳細に観察して実施されるため、安全に行える治療であると考えられています。さらに、血液透析中の時間が有効活用でき、その効果を日常生活の中で実感することができるので、運動療法の継続率も高くなるという好循環が生まれるのです。
  4. どのような方が対象になるのか?
    当法人での透析中の運動療法は、糖尿病性神経障害(しびれ、壊疽など)、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症の方、心筋梗塞・脳卒中の既往のある方は現在のところ対象とはしていません。しかし、運動を禁止しているのではなく、日常での運動は人それぞれ必要です。今後さらに効果的かつ安全に透析運動療法を実施できるよう、仁真会からも情報を発信していきたいと考えています。

 

仁真会における透析運動療法の手順

  1. 主治医の許可
  2. 運動療法の説明と同意
  3. 開始前の測定(以後6ヶ月ごとの測定と評価)
  • 運動耐容能測定:「心肺運動負荷試験」(CPX)

呼気ガス分析装置・12誘導心電図併用・自転車エルゴメータによる運動負荷試験

【目的】安全で効果的な運動療法を実施するため

  1. 運動へのリスク評価(潜在的な心臓疾患の有無などの評価)
  2. 適切な運動処方:嫌気性代謝閾値などを測定し、無理のない効果的な運動負荷量の設定 
  3. 運動の効果測定:運動療法による効果(運動耐容能)を評価

  • 身体機能測定:「下肢筋力」「10m歩行時間」「最大一歩幅」「開眼片足立ち」「握力」

「長座体前屈」                     
※測定結果と普段の生活、運動状況により運動処方を設定と6ヶ月ごとの再処方

ストレッチ

下肢を中心にウォーミングアップをかねてそれぞれ10回×2セット

5分~10分





筋力トレーニング

足首に重り(0.5kg~2.0kg)をつけて筋力トレーニングそれぞれ10回×2セット

(10分~15分)



エルゴメータ(有酸素)運動

ベッド上で10分~30分(10W~70W)